2号店日記(2)/天井のあるビジネス

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トミトアーキテクチャーさんに会う半年以上前、宿の次の展開を考えていた。
もともと今の物件での宿のスタイル(民泊)を考えていたわけではなく、「まずは一部屋貸しから始めてみよう」というお試しの意味もあった。だから常に物件は探し続けていて、ことあるごとに見に行ったりもしていた。その理由は当然、一部屋だけだと、収入が目標まで達しないからだ。

宿のビジネスの特徴は「天井」が決まっていること。

たとえ毎日開けたとしても一月で31日が限界。値段は一定なわけなので、31個の在庫を販売しているようなもの。こちらから顧客の数を決めることもできないので(もちろん、一人客は受け入れない、などとすることもできるが)、基本的には自分たちで在庫を増やすことはできない。唯一の方法が部屋数を増やすこと、なのだ。

が、これはこれでリスクがあり、なにせ増やすには毎月の固定費がかかる。宿の「在庫」はもし誰も入らなければ消えてなくなってしまう。人が入る見込みがないのに在庫だけ増やすと、自分で自分の首を締めてしまうのだ。

だからこの2年間、少しずつ「実験」を試みた。

1年目の値段は、5000円代と他の宿に比べると安価な設定。まずは真鶴にゲストハウスをつくって本当に人が来るのか? を確かめた。予約はAirbnbのみでの受付。

すると、レビューがついていないオープン当初こそなかなか予約は入らなかったが、初めて数ヶ月で7、8、12月などの繁忙期はほぼ毎日埋まるようになった。予約してくるのは9割が外国人。2泊以上の利用が多かった。

おそらく外国人にとって「真鶴」は未知の土地。しかし、外国人にとっては箱根も真鶴もあまり関係がなく、「東京」と「関西」の間でどこか1泊できたら、という需要があること。そして「知らないからこそ行ってみたい」、「他の外国人観光客がいないところに行きたい」という需要もあることが(半分予想はしていたが)わかった。「真鶴に宿なんかつくっても無理だよ」という始める前のネガティブな意見に少しだけ反証できたわけだ。

ゲスト受け入れのコツを掴めてきた2年目からは、徐々に単価を上げていき、最終的には自分たちが感覚的に最高と思える1泊7800円とした(余談になるが気軽に値段を変更できるのはAirbnbの良いところだと思う)。

ちょうどその頃『やさしいひもの』が販売開始し、各書店のSNSなどでも拡散された。ソトコト、雛形など初期にメディアに出させてもらったことがようやく反応が出始めたのか、「泊まれる出版社」という言葉も徐々に広まってきた。

そうすると客層は徐々に変化。国籍はほとんどが日本人になり、1泊の宿泊が多くなった。ゲストの宿泊理由も「地方に移住を考えているから」、「真鶴出版をメディアで知ったから」など、真鶴及び真鶴出版目的のゲストが増えた。

1年目で外国人需要、2年目で地方に興味がある層に需要があることがわかる。しかしここまでやってみて、徐々に今のスタイルでは満たせない需要があることもわかり始めるのだった。

つづく